短詩

『春』

風に土の匂いを嗅いだ日は
郵便ポストに音がする

『歩行者天国』

肩の上のおまえには
大人の修羅が見えるかい

『山の座標』

山道の陽辺り
目あき盲者は未だ到らず
再生の座標に

『水風船』

水風船
赤がいいのとねだりし子
じょうずにつけずにおこりだす

『詩的なるもの』

無意識が
幾億もの細胞を
一方向に鋤く不思議

『秋冷』

風　冷めて
人　群れのなか

『新築』

新築の傘立てに傘並び立つ

『若木』

そのままに濡れる若木の無頓着

『産院』

初孫を授けて母へ恩返し

『走り梅雨』

壁面を雨何本も真っ直ぐに消え

『受験』

受験終え妻と語らふ朝の道

『梅祭り』

花咲くは木のちからなり梅祭り

『若緑』

走る背の見え隠れして若緑

『メール』

思ひつつ読むメールあり冬の夜

『サンパウロ』

街明かり大地に現れ夕寒し

『クリスマス』

クリスマス旧かなづかひの歌うたふ

『団栗』

開く手に団栗の五つ六つあり

『餅』

餅の数問う母にすぐ子らの声

『梅』

梅咲くや電信柱の影を踏む

『鯉幟』

風はらみ泳ぐがよろし鯉幟

『枝豆』

枝豆や間合ひの良さに妻をみる