日常

日常的ではないこと
をした日の翌朝は
日常的なことが何だったのか
がよくわかる

何気なく過ぎて行くことは
大きな木にもたれ寄る安心と同じだ
向こうの原っぱで
ボール蹴りをする人を眺めるような安らかな日々
あくびをしたり　読書をしたり　空想にふけったりする日常は
大きな家だった

校長先生は　まず居場所を見つけなさい　と言われた
なわばりを作りなさい　と言うことだった
結界を張りなさい　と言うことだった
一個の椅子に座って雲を眺めなさい　と言うことだった

ムネオ氏が非日常的になったのは
空想が過ぎたからだ
背中に翼が生えたと思ったからだ
自分がエンジェルだと思うゴキブリに
変身してしまったからだ
人の言うことはわかる
が自分の声は大声でしかない
小さな論理を脇差しにして
高らかにモーと吠える
大きな木から遠く離れてしまったことに
気づいて目覚める
悪夢だった
戻ろう　日常まで。
も一度見つけよう　居場所を
なわばりを　結界を　一個の椅子を
牛の背にのり大きな木まで帰ろう

今　桜が散る　桜散って　青葉繁る
今　風が吹く　風吹いて　花びら舞う
さよならは　自分が去るためにではなく
さよならは　去るものを見送る言葉であればいい
日常を残し　そして繁るために