大いなる田舎 �T

ガサッと音がした。彼女の舌がピクッと応じる。星の光りが洞窟に転がる鹿の骨を白くする。彼女は眠っている。木陰に憩うようにして。

風の音がした。男達は黙っていた。歩き続ける馬は視線を斜め下に固定する。乾いた道に影がある。影のすき間に風が吹く。

悲しみは一億年前の棚に置き
向かいの棚から優しさの本を取る
勇気の章は
紙飛行機を折るには冴えない
もとより飛ばす方向が定まらない

音がする。骨の転がる音だ。女達は砧を打つ。男達は帰らない。太陽は山脈を渡り焼き畑に雲が行く。日溜まりに過ごす老人と子供の横で食事の器がカランと鳴った。

休日の朝にはマクドナルドへ行き
新聞を見ながら
ゆっくり 近い将来を語り合う
幸せは 骨のように白く
虚ろさは 骨のように軽かった

乾いた道
車が風をおこして 過ぎていく